クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~


「あー……まだ、誰にも言ってないんだけど……実はさ、私、結婚したんだよね」

「……。えぇーっ⁉」


 目が落ちそうなほど見開き、野々花の上げた声が店内に響き渡る。

 周囲の客数人がこっちに視線を寄越していた。

 告白する場所を間違えてしまったかもしれない。


「ちょっと待ってよ! 結婚って、私なにも聞いてない! そういう相手がいるのも知らなかったし。てっきり真白はフリーで、恋愛になんて興味ない系女子だと思ってたのに。ていうか、相手は⁉」

「あ……相手は、高坂遥機長」

「……。はぁぁぁ⁉」


 さっきよりも更に大きな声を出した野々花に、私の肩もびくっと跳ねる。どちらかというともう叫び声に近い。

 目を見開いたままの野々花は急に胸に手を置き、「ちょっと待ってね」と深呼吸みたいなものを始める。

 数秒して落ち着きを取り戻し、テーブルに両手をついて身を乗り出した。


「ごめん、話が急展開すぎてついていけてない。結婚した相手が高坂機長って」

「なんか、嘘っぽい話だよね」


 一連の野々花の反応を見ればわかる通り、私が遥さんと結婚したというのは簡単に納得できる内容ではない。もはや信じられないまである。

 まぁ、実際は嘘みたいなものなのだけど……。

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