クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
「あの高坂機長でしょ? いつからお付き合いしてたの?」
「えっと……」
遥さんとは、交際期間は短かったけれど、遥さんが早く一緒になりたいと言って結婚したということにすればいいと軽く打ち合わせ済だ。
「付き合い始めたのは、半年くらい前。結婚したのは、まだ一カ月とかなんだけど」
「スピード婚ってやつ? ちょっと待ってよ、興奮して暑くなってきたし」
野々花はそんなことを言いながら足湯から足を上げる。タオルで拭いて座り直した。
「半年前って、ぜんぜんそんな素振りなかったじゃん」
「うん。遥さん、あの通り女子から大人気だから、私が内密にしたいってお願いしてたんだよね……」
これも遥さんと相談済の話。隠していたとすれば、急に結婚したと言われても納得できる。
「なるほどね、やっと納得できた。そういうことか、それじゃわかるわけないわ。でも、〝遥さん〟なんて呼ぶんだから、こりゃ本物だわ」
野々花は口を両手で覆って、「いやー、マジかー」とそわそわお落ち着かない様子を見せる。
信じてくれた姿に、心に小さな針が刺さる。
終わりを迎えた時は、事情説明と謝罪を一番に野々花にしたい。
「ちょっと、今日は詳しく話聞かせてもらうからね」
野々花はワクワクした様子でビールのグラスを呷った。