孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~


 そして困ったことに、私は遥さんをこんなに意識するようになっている。

 それはきっと夫婦ごっこのせいで、本当に惹かれているわけではない。錯覚でしかないはずだ。

 頭ではそう考えているのに、気持ちの方は裏腹で暴走してしまう。困ったものだ。

 そもそも、遥さんは誰にも縛られずに生きていきたいと思っている人。


『煩わしいんだ。結婚という誓いで、誰かに縛られることが。すべてはそれから逃れるためだ』


 そんなことを言っていたくらいだ。

 私に好意を抱かれていると知ったら、慌ててこの偽装結婚も解消したいと言うだろう。


「代わろう。少し休んだらどうだ」


 いつの間にか遥さんが戻ってきていて、下準備していた手元の食材から顔を上げる。


「あ、大丈夫です。後は鍋に食材を投入するだけですので」

「わかった。ここからでも代わる」

「ありがとうございます」


 遥さんは食事の準備以外にも片付けや掃除も積極的にやってくれるから、家事が負担だなと感じることは今のところまだ一度もない。

 むしろ、もう少し休んでほしいと思うくらいだ。

 遥さんがキッチンに入ってくれたところで、私はダイニングテーブルに鍋を運ぶ支度に取り掛かる。

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