クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
「チーズケーキ、いただきます」
早速、遥さんのお土産のチーズケーキをいただいてみる。
取り分けた時も思ったけれど、ずっしりとしていて重かった。濃厚なチーズケーキが期待できる。
「……美味しい!」
予想通りのまろやかで濃く、その上で上品な味のケーキに歓喜の声を上げる。
「良かった」
遥さんはグラスを片手にワインを楽しんでいる。ワイングラスが似合うのは、飲みなれている貫禄だろうか。
私も真似てグラスを手に取る。アルコールが濃いだろうと警戒してひと口だけ口に含んでみた。
「本当だ、飲みやすいですね。フルーティーで爽やか」
「でも、度数はあるから飲みすぎないように」
「はーい、気を付けます」
チーズケーキとワインを楽しみながらの映画鑑賞は贅沢な時間でうっとりしてくる。
いい気分になっているのは、やっぱりワインに慣れていないからかもしれない。
酔いが回ってきているせいか、あくびが出て来て嚙み殺した。
ソファに体を預け、ぼんやりと画面を眺めていると、となりに掛ける遥さんが静かに体を寄せてくる。
近づいた距離に視線を上げると、遥さんは映画をじっと観ていた。
綺麗な横顔につい見惚れる。この距離でこんな風に〝高坂機長〟を見ていることが未だに不思議で信じられない時がある。
触れた部分が、彼の体温を感じてじんわりと温かくなってくる。
映画を観ている視界は、徐々にぼんやりと霞んでいった。