孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
「お義父様!」
まさかと思っているうち、目の前で泣いていた難波さんが飛び出していく。
予想通り、現れたのは遥さんのお父様。お会いするのは初めてだけれど、『JSAL』の上層部にいるという噂の人だ。
ここを訪れることもきっと珍しいはずなのに、こんなタイミングでお会いすることになるなんて……。
「聞いてください! 遥さんが、私ではない別の女性と一緒になるって言うんです」
難波さんのあの様子なら、お義父様とも顔見知りで、何度も会ったりしたことがあるのだろう。泣きついてこの状況に助け舟を出してもらおうとしている。
「遥さんにも、一緒にいる女性にもなんとか言ってやってください。お義父様、お願いします!」
隣にいる遥さんは、黙ってその場を見守っている。
難波さんにお願いをされたお父様は、遥さんと私に目をむけると、最後に難波さんを見下ろした。
「遥から、君との縁談は断ったと聞いている」
「え……そんな」
「一緒になりたい女性がいるからと、はっきりと言っていた」
お父様からもそう言われ、難波さんはとうとう声を無くす。
「それなのに、君はしつこく遥に付き纏っているそうだな。話は耳に入ってきていた。ビジネスの場で公私混同して騒ぐとは、仕事へのプライドはないのかね」