クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
難波さんはもう泣くこともできず、ただ瞬きを忘れたようにお父様を凝視している。自分の中で、助けてくれるはずだったお父様からの辛辣な言葉に驚愕の色は隠せない。
「君のお父さんにも釘を刺しておかないといけないようだな。私の話が通じないようなら、別の会社でCAをしてくれ」
とどめとも言える言葉をかけられた難波さんは、黙ったままその場を走り去る。
その姿を見送っていると、「フライト後か」とお父様が遥さんに声をかけた。
「今さっき戻ったところ」
「そうか」
お父様の視線が私に向き、またすぐに遥さんに戻る。
「こちらの彼女が、話していた相手か」
「はい。三森真白さんです」
思わぬ場所とタイミングで紹介され、「三森真白です」と頭を下げる。
今の一件でわかったことは、遥さんは私のことをご両親に内内に話しているようだ。
「真白さん、初めまして。遥の父です。やっとお会いできた」
年を重ねても美しい顔立ちのお父様は、きっと若い頃は遥さんのように振り返られるような男性だったのだろう。ふたりが並ぶと、親子だと一目瞭然だ。
「多忙につき挨拶が遅くなって申し訳ない。今度、妻も交えて食事にでもいこう。ゆっくり話がしたい」
「はい、ありがとうございます」
頭を下げると、お父様はにこやかに微笑んでくれた。
「じゃ、遥。また連絡するよ」
「ああ、わかった」
お父様は連れの男性と共に立ち去っていく。その後ろ姿を遥さんと共に見送った。