孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
「なにかされたのか」
「いえ、事故みたいなもので。このネックレスのことを指摘されて、彼女に掴まれそうになったので咄嗟によけたんです。もし、切れたらって思って。その代わりに、指先が当たって、こんな引っかかれたような形になってしまったようで……」
遥さんが現れる前のことだ。
話を聞いた遥さんは「そうだったのか」と一瞬険しい表情を見せた。
「俺の事情で、面倒なことに巻き込んで悪かった」
「そんな、謝らないでください。これだって大したことないですから」
出血はしていなかった。少し内出血をしている程度だ。数日で消えるし痕も残らない。
「本来負わなくていい傷だ」
遥さんの指先がそっと傷に触れる。触れられても痛みもない程度の傷だから心配いらない。でも、遥さんが罪悪感を抱いているのが伝わってくる。
「じゃあ、これは名誉の負傷ってことにします。それなら、遥さんそんな顔しないですよね?」
咄嗟にそんなことを言ってみたけれど、遥さんはなぜかふっと笑みをこぼす。
「名誉の負傷って、なんだよそれ」
「あ、ほら、ネックレスが壊れないように守ったっていう意味です!」
遥さんが破顔して、変なことを言ってみた価値があったと気が抜ける。良かった、と安堵した。
「真白、ありがとう」
遥さんの腕の中にまた閉じ込められ、優しく抱きしめられる。私の方からも腕を回し抱きしめ返した。