孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
8、伝えたい想い
新年を迎えた一月三日。
年末年始は特に忙しい航空業界は、まとまったお正月休みを取ることが難しく、私は三が日の三日早朝から仕事に出ている。
それでも今年は元日と二日が休みになっていたから、実家に帰り祖母と妹弟たちとお正月を過ごした。
遥さんは大晦日の日に国際線勤務でドイツのミュンヘンへ飛び立ち、今日帰国する予定だ。
ばたばたと年末年始がやってきて、新しい年はもう三日も過ぎてしまったけれど、難波さんの件があってからはまだ一週間も経っていない。
遥さんが長期フライトに出ていきひとりになる時間が増え、私はあることに気が付いてしまった。
偽装夫婦としての役割は、もう果たせたのではないか──。
私は宮崎さんとのことが一件落着し、遥さんも難波さんとの縁談はしっかりと消滅した。お互いに当初の目的は達成し、夫婦と名乗って過ごす必要性はなくなった。
遥さんの言葉を思い出す。
『必要がなくなれば解消する』
この関係を始める前、遥さんは確かにそう言っていた。
その言葉に変わりがないのなら、もうこの偽装夫婦の関係は解消することになる。