クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~


 でも、うやむやにするわけにはいかない。

 今日、遥さんがミュンヘンから帰国する。

 ここ数日ひとりで考えてきたこと。それを今晩、遥さんに話そうと思っている。

 腕時計に目を落とすと午前七時過ぎ。早朝五時の早番勤務開始から早二時間が過ぎていた。

 今日は到着ゲート業務の担当で、お客様の誘導などにあたっている。

 ドイツ・ミュンヘンを現地時刻一月二日十二時頃に発った遥さんは、間もなく羽田へと到着する。現時点では定刻通りの予定だ。


「やだ、雨だ……」


 すぐそばにいた野々花からそんな呟きが聞こえ、外へと目を向ける。

 今日は日が昇ると共にどんよりとした空ではあったけれど、さっきまで雨は降っていなかった。

 真冬の雨は雪にでもなりそうだ。


「あーあ。朝、洗濯外に干してきちゃったよー。まさか雨が降るなんて。今日、曇り予報だったよね?」

「うん、確かね」


 そんな話をしているときだった。到着ゲートを一緒に担当する先輩が「三森さん、飯田さん」とどこか真剣な顔つきで私たちを呼び寄せる。

 どうしたのだろうと近づくと、先輩はデスクコントローラーとやり取りをしていた。

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