クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
「えぇ!? 機体に」
デスクコントローラーとやり取りをしている先輩から、予期せぬ声が上がる。
その場にいた関係者の目が一斉に彼女に集まった。
何事だろう。鼓動が嫌な音を立てて高鳴っていく。
「──はい、わかりました。ミュンヘンからの着陸便、機体が被雷したって」
えっ……。
あからさまに反応してしまいそうになったのをこらえ、動揺をひた隠す。
「このまま羽田に着陸は難しいか……?」
そばにいた桐生機長が荒ぶる空を見上げて呟いた。
地上にいながら祈ることしかできない私は、ぴかっと稲妻を走らせた暗い空にただただ無事を願っていた。