孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
あのまま多少の無理をして羽田への着陸に挑んだ場合、もしかしたら国交省の聴取を受けるような事態になっていたかもしれないと、桐生機長をはじめ居合わせたパイロットたちが話していた。
玄関から帰宅した気配を感じ、座っていたソファから立ち上がって り玄関へと駆けていく。
ちょうど玄関を上がった遥さんと対面し、自然と目に涙が浮かぶ。
気持ちが昂って、迷うことなく遥さんに正面から飛び込んでいた。
「遥さん、お疲れ様でした……お帰りなさい」
私を受け止めた遥さんの大きな手が背中を優しくさする。そして、しっかりと抱きしめた。
「お疲れ。ただいま」
まずはそれだけの言葉を交わし、じっと抱きしめ合う。
体を離し見上げると、遥さんは私の顔を見て柔和な笑みを浮かべた。
「なんで泣くんだ」
「だって……勝手に、涙が」
国際線フライトからの帰国。この数日は、なぜだか今までで一番長く感じられた。それに加え、最後の最後で予想外の出来事が起こったのだ。
「俺に会えなくて、そんなに寂しかったか」
私が感極まっている理由は絶対察しているはずなのに、遥さんはわざとなのか意地悪なことを言う。
でも、それも間違いではない。この数日間が長く感じられたのは、遥さんがそばにいない時間を過ごしていたからだ。
自覚と共に、また彼にぎゅっとしがみつく。