孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
「雷が落ちたと聞いて、心配していました。ダイバードすると知ったときも、なにか緊急事態が起こったんだって、ずっと落ち着かなくて」
「心配かけたな。あのまま待機も考えたが、機内で異臭がするとの知らせを受けたんだ。結局、それは動揺した乗客の勘違いだった。だが、騒ぎを大きくしないためにも、関空に向かう判断をしたんだ」
遥さんの判断に加え、会社側も緊急着陸に同意したと聞いていた。
なにより、 被雷を受けた上に関空に緊急着陸をすることになったにもかかわらず、乗客からはお褒めの言葉を多くいただいたとも耳にした。
遥さんをはじめ、乗務員たちの見事なチームワークがあったからだろう。
「真白たち、地上のスタッフたちにも迷惑をかけた」
「私たちは、なにも。祈ることしかできなかったですから」
「到着便を待つ人々への対応も大変だったと聞いた。動いてくれてありがとう」
空を飛ぶことのない、地上にいる私たちにもこうして敬意を払ってくれる遥さんは、技術だけではなく心意気も素晴らしいパイロットだと改めて胸を打たれる。
遥さんと出会えたこと、こうして一緒にいられることがなによりも幸せ。
やっと再会できた遥さんのぬくもりを感じながら、ふと現実に引き戻される。
もしかしたら今晩で遥さんと食卓を囲むのは最後になるのかもしれないと漠然と思った。