孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
年末からひとり考えてきたこと。この偽装結婚という関係はもう終わりが近づいているという現実。
今晩切り出せば、明日には元通り他人に戻るのかもしれない。
偽装夫婦の話を受けてくれてありがとう。助かった。なんて言われて……。
この話を持ち掛けられたときのようにどこか事務的に話され、この関係が終わるに際しての流れを確認するのだろうか。
想像しただけで気持ちが沈み、話を切り出すのを先延ばししようかという悪魔の囁きが聞こえてくる。
でも、延ばしたところで逃れることはできない。
早いか遅いか、それだけのことだ。
もう妻としての役目を果たした私は、遥さんのもとからいなくならなきゃいけない。
でも、私はやっぱりこの人と一緒にいたい。
遥さんと、これから先もずっと……。
「すぐ、ご飯にしますね」
様々な気持ちがせめぎ合う中、帰宅した遥さんを普段通り迎え入れた。
ダイニングテーブルに近づいた遥さんから「お」と声が漏れる。
「お節か」
「一応、今日まだ三日ですからね。遥さんもお節は食べ損ねたと思ったので、作ってみました」
「すごいな。手作りお節なんて贅沢だ」
「そんなことないですよ。簡単に作ったので」
嬉しい言葉をかけてもらえると作った甲斐がある。