クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
「こうやって、一緒にご飯を食べるのも、これが最後なのかもって」
「え……?」
「今日は、いろいろなことをするたびにそう思ってました。玄関で出迎えるのも、一緒に食べる食事の用意をするのも、こうして、ふたりで食卓を囲むのも……全部、最後かもしれないって」
だんだんと声が震えてきて、最後は言葉に詰まってしまう。
本当は泣くつもりなんてなかった。
泣いてしまったら、遥さんがきっと終わらせづらくなる。
この関係を始めたときと同じように、普通の私でいること。笑って、感謝してお別れできるように。それが私の最後の役目でもあるから。
胸いっぱいに息を吸い込み 、震える声を落ち着けて「泣いてごめんなさい」と口を開いた。
私をじっと見つめていた遥さんは、黙って席を立ち上がる。
そのままひとりリビングを出ていき、一分もしないうちに私の前へと戻ってきた。
「これを、渡そうと思ってた」
私の前に置かれたのは、長方形のリングケース。遥さんの手によってその蓋が開けられると、そこには大小ふたつのリングが並んでいた。
一緒に選んだマリッジリング。セミオーダーだったものが届いたようだ。
でも、これだってもう必要がなくなるのでは……?