クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
「何度もすみません、最後にもう一度確認を」
挙式本番を前に、遥さんが最後にもう一度披露宴会場を訪れようと今日は仕事後に立ち寄った。
プランナーは快く「どうぞどうぞ、ごゆっくり見ていただいて」と当日使う予定の披露宴会場を解放してくれる。
時刻は十四時過ぎ。
奥の広いガラス窓からはちょうど離陸していく旅客機が見えた。
「遥さん、そんなに心配しなくても大丈夫だったのに……」
プランナーが席を外したタイミングで遥さんに詰め寄る。
「念のためだ。初回見に来た時は『少し高いですね……』なんて言ってたんだからな」
チャペルは会場二階で問題なかったものの、披露宴会場となる場所は建物三階。
空港はよく臨めるけれど、私にとって若干苦手な高さになってくる。
それでもこうして何度も会場に足を運び、少しずつ慣らすように努力してきた。
どうしてもこの場所で披露宴を挙げたかったから。
そんな私の気持ちに一番寄り添ってくれる遥さんは、式場に無理を言ってこうして何度もここに連れて来てくれた。
おかげで挙式本番は安心して式に望めると思う。
「もうすぐ本番ですね」
ふたりきりの披露宴会場で、当日の様子を想像してみる。
最高のロケーションであり、馴染みのある場所で、大好きな人と、大切な人たちに見守られて挙げる結婚式。
遥さんが私の背に腕を回した。
「楽しみだな」
「はい」
幸せな光景が頭の中で浮かび、自然と顔が綻んだ。