孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
両親のいなくなった我が家で、私は常に家計の心配をしてきた。
高校に入学してからは少しでも家計の足しになればと三年間学業とバイトを両立させ、専門学校に入ってからはバイトの時間も深夜までにし、週末もびっしりシフトを入れた。
そんな風にやってきてやっと就職し、今はこの家の大黒柱のような役割を担っている。
もちろん、生活は豊かではない。うちの家計は、祖母の年金と私の給料でなんとかやり繰りしている状況だからだ。
奈子もバイト代を家に入れると言ってくれているけれど、それで自分のスマホの使用料を払ってくれれば十分だと話している。
それでも、蒼の分の通信費も一緒に払うと気を遣ってくれているほどだ。
そんな家庭環境ではあるけれど、家族みんな仲が良く幸せに生活していること。裕福でなくても、私は笑って毎日暮らせていることに感謝している。
「ふたりしてお姉ちゃんをからかわないの」
毅然とした態度を見せているものの、ふたりのニヤニヤした顔に負けそうになる。
「えー、別に隠さなくたっていいじゃん、相手誰? 男の人でしょ?」
「職場の人だから。そういうんじゃないの」
「おっ、やっぱ男なんだ」
「だから、あんたたちが想像してるような浮かれた約束じゃないから」
部屋を追い出すようにふたりを廊下に出し、「はいはい、学校遅刻するよー」とリビングに連れて行く。
姉弟たちが登校してからでもまだ時間はあるし、コーディネートは決まってないけど後回しにすることにした。