孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
約束の時間は午後二時。待ち合わせ場所は、台場駅と指定された。
結局、コーディネートは無難なものに落ち着いた。グレーベースのチェックプリーツロングスカートにホワイトのニット、それにブラックのノーカラージャケットを羽織ったシンプルな格好だ。
高坂機長と会うという事実につい変な力が入ってしまったけれど、落ち着いて考えてみれば力む必要なんてない。
これはデートでもなんでもなく、会って話をするというだけ。
だから特別オシャレをするとかは不要で、社会的に失礼のない姿で挑めばいいだけの話だ。それに気づけば多少は気楽に支度ができた。
よくよく考えてみれば気合い入りまくりで待ち合わせ場所に現れたりでもしたら、こいつはなにを勘違いしているのだと思われるだけの話だ。危ない危ない。
駅を出て階段の下で待ち合わせようと言われていて、ここでいいのだろうかと周囲をキョロキョロと見回す。
着きましたってメッセージ一応入れておこうかな……。
そう思いながらバッグからスマートフォンを漁っていると、目の前の道路に一台の高級セダンが停車する。
その運転席に見えた顔にスマートフォンを探していた手が止められた。
パワーウィンドウが開いて、高坂機長が手招きする。
ぺこりと頭をさげ、車へと近づいた。