孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
「悪い、待たせたか」
「いえ、今来たばかりです」
「とりあえず、乗って」
乗車を求められ、「はい」と歩道から助手席へと向かう。
海外の高級外車に度肝を抜かれ、「お邪魔します」とドアを開いた。
「このすぐ近くに移動する」
「わかりました」
砂利ひとつ落ちていない綺麗な車内マットにそろりと足を上げ乗車する。
腰かけたシートが今まで体験したことのない座り心地のシートで、思わず「わっ」と声が漏れてしまった。
さすが『JSAL』の御曹司。庶民には考えられない生活を送っているのだろう。
私がシートベルトを締めると、車は静かに発車する。
「すみません、ありがとうございます。目的地が決まっていたのなら、現地集合で自ら向かいましたよ?」
今日に限らず、男性の車に乗ることは私にとってはハードルが高い。
これまでも数回交流があったのちにしか車には乗っていないし、昔から自分でそう決めている。
「あまりよく知らない男の車には乗らない主義なのか」
「えっ!」
ご名答過ぎてあからさまな反応を見せてしまう。
進行方向を見ていた高坂機長はこちらに一瞬顔を向け、そしてふっと笑った。