孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
「あの、別にそういうつもりで言ったわけではなく」
「いいと思うぞ。俺は好感が持てる」
思わぬ返答が返ってきて、今度は私の方が高坂機長の横顔をじっと見てしまう。
高坂機長はフロントガラスの前を向いたまま、ほんの少しだけ笑みを浮かべていた。
そこから沈黙となってしまったものの、目的地は待ち合わせ場所からさほど離れていなかった。
石造りの塀と、立派な門の前には制服のスタッフ。
『TOKYO BAYRESORT CLUB』と目にして、思わず二度見してしまう。
え、ここって確か、会員制の施設じゃ……?
以前、ネットの記事かなにかで見たことがある。
会員権を所持していないと利用できない都会のリゾートホテルで、中にはスパやレストランなどの施設が入っているという。
一般庶民は利用できない上流階級の人々の世界だ。私にとってはまさに異世界。
門の前でスタッフにカードらしきものを掲示すると、スタッフから「いってらっしゃいませ」と声をかけられ高坂機長はパワーウィンドウを閉める。
そのまま開いた門を入っていくと、両サイドに植え込みで整えられた対向一車線の道が続く。やがて中央に大きな噴水が水しぶきを上げるロータリーに差し掛かると、高坂機長は聳える建物のエントランス前で車を停車させた。