孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
「降りよう」
「あ、はい!」
エンジンを切り、車を降りていく高坂機長の姿に慌ててシートベルトをはずす。手間取っているうちに高坂機長が助手席のドアを開けた。
「すみません、ありがとうございます」
車からそろりと降りながらキョロキョロと周囲を見回す。
エントランスはクリーム色の大理石造り。そこには金字で『TOKYO BAYRESORT CLUB』と記されている。
一体、何階建ての建物なのだろう?
見た感じかなり高層だけど、目的の場所が上の方の階だったら困る。
生まれつき高いところが得意ではなかった私は、生きていく上で地面に極力近い場所で生活するようにしている。
頑張って二階程度まで。それ以上となると、怖くて足がすくんでしまうのだ。
車寄せの近くで制服のスタッフと話していた高坂機長が「行こう」とエントランスに向かっていく。
エントランスの自動ドアを抜け、入ったロビーは正面に大きな花のオブジェがある。床は大理石で模様が描かれており、ちょうどオブジェを丸く囲うように見える。
高坂機長に続いて奥の廊下を進んでいく。
高い天井には黒いシャンデリアが等間隔で明かりを灯し、重厚な雰囲気に終始落ち着かない。高坂機長が足を止めたのは、一階奥にあったレストランだった。
レストラン受付で黒服に声をかけると、すぐに奥へ案内される。