孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
まったく検討がつかず、食い気味に訊いてしまう。
高坂機長は薄い唇にわずかに笑みをのせた。
「気になるか、意外だな。そう言っても興味も示さないと思ってた」
誰だってなにか理由があって自分に声をかけたなんて、ましてこんな内容なら気にならない人はいない。
「まぁ、それは追々話すとして……乗ってくれるか、今回の話に」
うまいこと話をかわされ、核心に迫られる。
こちらの返事が通じていなくて、「ですから」と軌道修正をはかった。
「私はその相手には相応しくないですから、他を当たっていただいて──」
「絵を描いて収入を得ているよな」
「……。えぇっ?」
突然出された話題に固まる。
絵? 趣味のこと? なんで、高坂機長がそんなこと──。
そこまで思って、先日の展示会のことを思い出す。
あの日、高坂機長と直接話すことはなかったし、気づかれもしなかったはず。
でも、指摘通りあの時の展示会で人生初めて自分の絵に買い手がついたのは確かだ。
もしかして、その時のことを……?
「多少の額でも、それは会社的に副業になる。うちの会社は副業は禁止だ。もし知られることになれば……」
「もっ、もしかして、脅しているんですか⁉」
高坂機長は余裕の笑みで私を見据える。アールグレイティーに優雅に口をつけた。