孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
「脅すなんて人聞きが悪い。事実確認をしただけだ。それに、その調子なら俺が口外しなければわからないことだろう」
それが脅してるってことなんですけど……⁉
「……黙っている代わりに、この話を引き受けろと、そういうことですか」
「話に応じてもらえないなら、それも悪くないな」
悪くないなって、そんな……。
本格的に話をつけないとまずい方向になってきて、気を引き締めて背筋を伸ばす。
平然とスイーツを食べる高坂機長に「あの」と切り出した。
「私には、まだ学生の姉弟がいます」
話を切り出すと、高坂機長は手を止め私に注目する。
「うちはすでに両親が他界していて、祖母と、高校生の妹、中学生の弟と四人暮らしです」
この際、うちの家庭の事情を知ってもらって諦めてもらえばいい。
なりふり構っている場合でもない。
「家計も、私の給料と祖母の年金、高校生の妹がバイト代で協力してくれてやりくりしています。だから、私が家を出て別々の生活をすれば、家族に負担がいくのはわかりきったことです」
私の声を最後にふたりの間に沈黙が落ちる。
高坂機長はテーブルの上で視線を泳がせたまま、なにかを考えているような表情を見せていた。
これはあともうひと押しに違いない。
「お断りしているのはそんな事情もあるからで、ですので──」
「悪かった。なにも知らずに」
「いえ……」
ホッ……。
やっとわかってもらえた。ちゃんと話せばわかってもらえるもの。そう、安堵したのも束の間。
「心配いらない。君の家族もすべて面倒をみる」
返ってきた言葉に驚愕した。