孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
「えっ、どうしてそうなるんですか」
「どうしてって、それがこの話を断る理由のひとつなら解消するのは当たり前だろう」
まさかそういう方向に話がいくとは思わず絶句状態。
これを言えば諦めてもらえるだろうと思ったことが、こんな風に裏目に出るなんて。
「偽装夫婦はあくまで偽装。本当に結婚するわけではないし、お互いに都合よく利用すればいいだけ。互いに干渉もしない」
名前だけの、偽装結婚。
お互いを都合よく利用して、干渉せず、快適な日常生活を送るためにする契約。
「必要がなくなれば解消する。もちろん、無駄に周知する必要もない。君の家族のことも心配いらない。どうだ、断る理由はなにひとつないだろう」
真剣に訴えかけられて、先ほどのように断る言葉が出てこなくなる。
「どうして……そこまでして、偽装結婚をする必要があるんですか?」
単純に疑問が浮かんできて訊いてみる。
リスクも、負担もあるはずなのに、そこまでする理由を知りたい。
「煩わしいんだ。結婚という誓いで、誰かに縛られることが。すべてはそれから逃れるためだ」
要は独身貴族でいたい、みたいなことか……。
確かに、誰かと一緒になれば様々な部分で縛られることになる。
独身の頃の自由はなくなってしまう。
それに、高坂機長のような家柄、身分だと、一般人より結婚という節目は面倒くさそうだ。
切れ長の目にじっと見つめられて、気づけば「わかりました」と返事が出てきていた。
「ありがとう。話を理解してもらえて助かる」
高坂機長は真剣だった顔に微笑を浮かべ、「じゃあ、これからの話をしよう」とティーカップを手に取った。