孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
3、偽りの夫婦生活
十一月半ば 。
雲一つない晴天で気持ちがいい秋晴れの空が広がる。
「なんだかんだ、いざ姉ちゃんが家からいなくなるってなると不安だよなー」
引越し業者が出入りし、玄関から運び出されていく段ボールを前に蒼がそんなことを口にする。
「蒼、少しはお姉ちゃん離れしなさい。これからはお姉ちゃんがやってくれてたこと分担してやるんだからね」
奈子に厳しいことを言われた蒼は、「はいはい」と気怠そうに返事をする。
「真白、これで通勤は便利になるようだし、良かったね」
「おばあちゃん、うん、ありがとう。奈子と蒼のことで負担かけちゃうと思うけど、私も、帰れる時は戻って手伝いするから。よろしくお願いします」
祖母は「大丈夫よ、ふたりともいい子なんだから」と皺の寄った笑顔を見せた。
今日は、いよいよ生まれ育ったこの家を出る日。
とうとう高坂機長との偽装夫婦の契約が始まるのだ。
家族には、もちろん偽装結婚の事実は話していない。
私の単身での引越しは、前々からほんの少し話題には上がっていた。
仕事のシフトが不規則な上、この家から自転車で通勤するのは大変だろうと祖母に散々言われていたのだ。