孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
高坂機長に指定された引越し先は、羽田空港から車で十五分ほどの湾岸エリア。
タクシーから降車し、聳える高層タワーを見上げて絶句した。
ま、まさかここの上の方では……。
そういえば引越し業者は運び込む部屋を把握しているようだったけれど、私は現地集合と言われていて詳しくは聞いていない。
マンションエントランスに向かいながら、スマートフォンを取り出し高坂機長の連絡先を出す。
電話をかけると、呼びだし三回目で「はい」と向こうから彼の声が聞こえた。
「あ、三森です。今、指定されたマンションのエントランスに着きました」
《今開ける》
「はい、お願いします」
上で高坂機長が解錠してくれると、エントランスの自動ドアが開く。
「開きました」
《入って、エントランスロビーの先にコンシェルジュカウンターがある。その奥がエレベーターホールだ。今、下まで降りる》
「わかりました。待ってます」
エントランスロビーは奥に滝のような水の流れがあり、待合いのソファセットも多数用意されている。
言われた通りコンシェルジュが在中していて、ハイグレードマンションというのが入場数十秒で想い知らされた。
コンシェルジュに会釈をされ、緊張しながら奥のエレベーターホールに向かう。
エレベーターは全部で三基あり、そのうちの一番奥の扉がポンと音を立てて開いた。