クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
「何時頃に出かけられそうか?」
ランドリールームで洗濯機の操作をしていると、扉が開き遥さんが顔を見せた。
今日はお互いの休みが合致した日で、新生活のためにもろもろ必要なものなどを買いに出かけようという話になっている。
「時間、合わせられます。もう洗濯機も乾燥かけたところなので」
「じゃあ、そろそろ出るか」
「はい、わかりました」
未だに、ふとしたタイミングで遥さんと接している自分が信じられない時がある。
こうしてこの家の中で一緒に過ごしていると感覚が麻痺してくるけれど、この生活が始まってから空港で遥さんを見かけた時、今までは感じなかった自分の変化に混乱した。
鼓動が高鳴り、そわそわ落ち着かないのだ。こんなこと、今までなかったのに。
常に話題に上がるエリートパイロットの遥さんだから、一日に誰かしらから名前を耳にする。
その度にどきりとするし、平静を装うよう努めているのだ。
こんなことでは、妻だなんて人に知られたら平然としていられるのか不安になる。
支度を終えて玄関に向かい、先に靴を履いていた遥さんと共に扉を出る。
今日の遥さんはアイボリーのケーブルニットに、ブラックのテーパードパンツというモノトーン調の落ち着いた装い。
私の方は、スモーキーピンクのニットカーディガンに、デニムのロング丈タイトスカートというコーディネートだ。