クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
日に日に慣れつつある豪華なエントランスロビーを通り、向かったのは地下駐車場。
高級車ばかりが並ぶその中に、遥さんの所有する車も駐車されている。
車に近づくとロックが解除される電子音が地下駐車場に響いた。
先に助手席に回って遥さんがドアを開けてくれる。
「あの、気を付けて開閉するので、お気になさらず」
こんな風にドアの開け閉めまでさせていては申し訳ない。いい車だから、どかっと開けてぶつけて傷でもつけられたら嫌なのはわかるけど、私が細心の注意を払えばいいだけのことだ。
というか、こんな高級車に乗せてもらうのだからそれは必然的に気を付ける。
ところが、なぜか遥さんは「なんだそれ」と、噴き出すようにして笑う。
「別に、車が大事でこんなことしてるわけじゃないぞ?」
「え?」
「奥さんへの気遣い」
爽やかにそんなことを言って、そっと背を押し乗車を促す。
勝手に鼓動が打ち鳴り始めて、慌てて腰を下ろした。その拍子にドアの淵に側頭部を強打する。
「いった……」
「おい、大丈夫か」
私の落ち着きのなさに、遥さんは驚いて車に乗り込んだ私を覗き込む。