クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
マンションを出て十数分。遥さんが運転する車は銀座に到着する。
今日は新生活で足りないものを買い出そうという話だったけど、なにをどこに買いに行くかは聞いていなかった。
この辺りに目的の店があるのだろうか。
有人の駐車場に車を預け、銀座の街に降り立つ。
「銀座は、どこに用が……?」
「婚約指輪と、結婚指輪を用意しようと思ってな」
「えっ」
銀座の街中で素っ頓狂な声を上げてしまう。
遥さんは私を振り返り「驚くとこか」と小首を傾げた。
「いや、そこまでするんだなって」
「そここそ必要だろ。きらっと光らせておけば、それだけで効果絶大だ。小道具みたいなものと思えばいい」
そっか、確かに……。
結婚しているということの証明みたいなもの。遥さんの言う通り小道具のひとつだ。
話を理解して遥さんのあとをついていく。横に並ぶと不意に手を取られた。
「っ⁉」
当たり前のように手が繋がれ、指が絡められる。
硬く骨っぽい指の感触に急激に体の熱が上がった。