クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
「あ、あの」
手を引かれるような形で斜め後ろから声をかけると、遥さんは「ん?」と肩越しに振り返る。
「え、あ、この状態は……?」
「この状態? なにかおかしいか? ああ、わかった。こっちの方がいいか」
そう言った遥さんは、繋いでいる手を離してその手を私の腰に回す。
「えっ、え⁉」
腰を抱かれると手を繋ぐより密着してしまい、あっという間に脈が乱れていく。
「〝夫婦〟なんだから、普通だろう」
「そ、そうかもしれないですけど……!」
動揺を露わにした私の様子に、遥さんはふっと笑う。腰に回した手を離し、再び手を繋ぎ直した。
「こっちの方がいい?」
「え、あ、はい……」
間違いなく赤面しているだろう顔も恥ずかしいし、どこを見たらいいのかわからない。
俯いて流れ落ちてきた髪で横顔を隠した。
「なんだ、ずいぶん初々しい反応するんだな。付き合ってた男がいたならこんなの朝飯前だろ」
「あ、朝飯前って。そういう、ちゃんとしたお付き合いみたいなのはしてなかったので」