クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
宮崎さんとは、付き合ったというほどの濃い関係ではなかった。
食事に行ったり、ちょっとしたデートみたいなことは数度したけれど、手を繋いだことも肩を抱かれたこともないし、もちろんそれ以上のことだってなかった。
友達以上、恋人未満という言葉がしっくりくるような関係で、尚且つ少しの期間で関係は終わったのだ。
「へぇ、そうなのか」
遥さんの特に興味もなさそうな返しで会話は途切れる。
そんな私とは対照的に、遥さんの方は女性の手を取ることなんてなんともないことなのだろう。
御曹司でパイロットでこの容姿。女性が放っておかないのは私も日ごろ良く目の当たりにしているし、これまで多くの人とお付き合いをしてきたに違いない。
訊くことなんてできないけど、一桁……いや、二桁は優にいってそうだ。
だとすれば、女性の扱いにも慣れているだろうし、経験も豊富なんだろうと勝手に想像する。
「特にここと決めてはこなかったけど、何店舗か見て気に入ったところでオーダーしようかと思ってる」
週末は歩行者天国になる大通りに出ていくと、遥さんは「とりあえずここから行ってみよう」と、ドアマンが立つ高級海外ブランドの路面店に向かっていった。