クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
「指輪見るのって、ここですか?」
「ああ、とりあえず」
こういう高級ブランドの店は縁が無くて入る機会がなく、初めての体験。
でも、こんなハイブランドでのエンゲージリングなんてとんでもない価格なのでは……?
ただでさえ、エンゲージリングは高額。それなのに、ハイブランドの名前がついたものとなると更に目が飛び出すようなお値段なのは見当がつく。
それを身に着けることになるなんて、落ち着かないし、なにより身に余る。豚に真珠もいいところだ。
外国人の大きなドアマンが微笑んでドアを開けて向かい入れてくれる。
落ち着きなくキョロキョロとしていると、遥さんは入り口近くにいたショップスタッフに「すみません」と声をかけた。
「エンゲージリングと、マリッジリングを見たいのですが」
「かしこまりました。ご案内いたします」
スーツのスタッフに先導され、連れていかれたのはアクセサリー売り場。落ち着いた売り場の雰囲気。来店客も洗練された人たちばかりだ。
「エンゲージリングはこちらになります。定番デザインはこちらになりまして、今年の新作が──」
ケースに並ぶエンゲージリングは、どれも大きなダイヤを輝かせている。
女性誌の広告なんかでしか見たことのないエンゲージリングに完全に尻込み状態だ。
「どういうのが好き?」
「えっ、えっと……」