クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~


 困った。この中から、「これがいい!」とは絶対に言えないし、そもそも選べない。こんな、お値段いくらかもわからないものを、この数分の中で選び抜くなんてこと……。

 でも、正面にはにこやかに見守るショップスタッフ。横からは遥さんが私の意見を求めて待っている。


「遥さんの、好きなもので私は構わないです」

「俺の好きなものって、これをつけるのは真白なんだから。あるだろ? こういうデザインがいいとか好みが」

「そうですけど……」


 私たちのやり取りを見て、ショップスタッフはふふふっと笑う。

 煮え切らない私の様子に、遥さんが「ちょっと失礼」と断って私の腕を引いた。

 売り場から少し離れたところまで連れて行かれる。


「スタッフの前じゃ言いづらいのかと思って。どうした?」

「すみません、ありがとうございます。えっと……なんと言いますか、気に入るデザインがないとかそういう次元でなくて」


 遥さんの端整な顔が不思議そうに私をじっと見つめる。

 思ったことを正直に伝えてみようと思った。


「身の丈に合っていないといいますか……エンゲージリングっていうだけで身構えちゃっているので、こんな、ハイブランドとなると余計に……」


 思いをそのまま伝えると、遥さんは「ちょっと待ってて」と言って先ほどのスタッフが待つ売り場へと戻っていく。なにかを話し、すぐに私の元へと帰ってきた。


「行こう」

「え?」


 手を取られ、店外へと向かっていく。

 一体どうしたのだろうと思っているうち、ドアマンの立つ入り口を出て表の通りを歩きだしていた。

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