クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
「で……どういうところだったら怖気づかず選べる?」
遥さんは私の歩幅にペースに合わせ、横から顔を覗く。見上げると目が合って、どきっと鼓動が跳ねた。
相変わらず均整の取れた綺麗な顔にも緊張するけれど、向き合って話を聞こうとしてくれている様子に胸が高鳴る。
真剣に考えてくれているのを感じて、私もそれに応えなくてはいけないと思った。
「そうですね……緊張は、どこでもしちゃうと思いますが、例えば、普通のエンゲージリングを取り扱う専門店だとかですかね? ハイブランドとかは、入るだけで緊張してしまうから」
御曹司でありパイロットである遥さんからしてみれば、なんとも庶民的な意見かもしれないけれど、もともと住む世界が違うのだから仕方ない。
「そうか、そういう専門店も候補に入れてた」
「そうだったんですか」
「ああ、俺も、なにがいいのかわからなかったからな」
メインストリートを歩いて数分、遥さんが足を止めたのは『Enchant』とロゴを掲げたアクセサリーの路面店。
ガラス張りの店構えは店内奥まで様子が伺え、白く明るい雰囲気のショップだ。
何組ものカップルがショーケースの前で商品を眺めている。