クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉～契約外の溺愛はどういうことですか？～

「やっぱり、こういう定番のものですかね……。でも、こっちのも素敵ですけど」


　でも、エンゲージリングというのはどのタイミングで身に着けるものなのだろう。

　日常的につけるのであれば、この大きなダイアモンドは私の生活には使いづらい。

　そんなことをぼんやり考えていると、「よろしければお出ししますので、お声がけください」とショップスタッフから声をかけられる。


「どれか出してもらうか？」

「そうですね……」


　ショーケースの中を見ながらどうしようかと考える。


「あの……ここまで来て言うのもなんですけど、エンゲージリングって、つけるのがって躊躇しちゃいそうで」

「どういうことだ？」

「なんと言いますか、石？　ダイヤモンドも大きいですし、仕事柄つけて歩くのも難しいと思ったり」

「ああ、なるほど……」

「マリッジリングみたいなシンプルなものならいいと思うのですが」


　私たちのそんなやり取りが聞こえたのだろう。

　さっき声をかけてきたショップスタッフが「よろしければ……」と控えめに声をかけてくる。


「エンゲージリングがという方には、最近はエンゲージネックレスというのも人気がありまして。となりのケースにございますので、良かったらご覧になってみてください」