孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
「そういえば聞こうと思っていたけど、展示会に出すくらい絵は本格的に描いてきたのか」
遥さんから私の絵についての話題が出てきて目を丸くする。
まだこの関係になる前、代官山の展示会で遥さんを見かけた。
偽装結婚の話を持ち掛けられた時も、絵で収入を得ているのかと問われた。
「いえ、絵は趣味程度で。あの時は、知り合いのクリエイターさんから誘ってもらって何点か作品を飾らせてもらったんです」
「へぇ。でも、誘ってもらえるレベルの絵が描けるってことだから趣味の域を超えてるんじゃないか?」
「いえ、まだまだです。いつかは、個展とか開けるくらいの絵が描けるようになったらいいなとは思いますけど……でも、今は描くことがただ楽しいので、絵が描けるだけで満足で」
絵で食べていけるようになりたいなんて贅沢な考えはない。
でも、自分の絵を好きと思ってくれる人が少しずつ増えていったらいいなとは思う。
「そうか。この間は、悪かったな」
「え……?」
「絵のことをネタに、ゆするようなことを言って」
「あ……」