クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
偽装結婚を持ちかけられた時、絵で収入を得ているのは副業になると言われた。
実際はそんな高額な金額をいただいてはないけれど、そんな風に言われてどきりとしたのは間違いない。
「真白が純粋に楽しんでいる趣味なのに、あんな風な言い方をした自分は最低だなと思ってた」
「いえ、そんなこと! 事実は事実ですし。って……副業といえるほどの活動はしてないですけどね」
へへっと笑うと、遥さんも微笑を浮かべてくれる。そして、もう一度「本当に悪かった」と真面目な調子で言った。
「君に、今の関係を迫るのに必死だったとはいえ……な。よく話を呑んでくれたな」
「あの時は、正直ちょっと思いました。これって脅されてる?って」
あまり重くならないように、クスっと笑いを交えて話す。
遥さんは「だよな」と言って、再び「ごめん」と謝った。
考えてみれば、遥さんの言う通りよく話を呑んだと自分でも思う。
この関係を始めることになった決め手は、絵の話題を出されたのは大きい。脅されている?と思ったくらいだった。
実際、会社にバレて仕事を辞めることにでもなったら困ると、一番にそれを心配した。
そんな風にして承諾した話ではあったけれど、不思議なことに今となっては日々脅されながら生活をしているとは一切思わないし、平和な日常を送っている。
それは、知り合って遥さんの人柄や人間性を垣間見るうちに薄れていったのだろう。