クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~


 一緒に住むために今のマンションに移った時、私が高所恐怖症だと察して即部屋の変更をしてくれたことは驚いた。脅すような相手にここまでしてくれるなんて。そう思うと、あの言葉は手段のひとつだったのかもしれないと思えた。

 そして、純粋に嬉しかった。


「でも、遥さんがただ自分の私利私欲の為だけの人じゃないって、わかりましたから」

「え……?」

「住まいの場所も、私のことを考えて即変えてくださいました。もし、あなたが自分のことだけしか考えない人だったら、そんな面倒なことはしないはずですから」


 改めて「あの時はありがとうございました」とお礼を口にする。

 遥さんはなぜだかふっと気が抜けたように笑った。


「無理を言って条件を呑んでもらったんだ。そのくらい当たり前だろう」

「それでも、私は嬉しかったので」


 話がちょうど区切られたところで、オーダーした炭火焼き料理が運ばれてくる。

 バーベキューのように串焼きになっている肉や魚介類を前に、「美味しそう!」と歓喜の声を上げていた。

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