クールなパイロットの偽り妻を演じます⁉~契約外の溺愛はどういうことですか?~
* * *
「美味しかったですね、炭火焼き」
マンションの駐車場に到着し、部屋へと帰るその道で真白が唐突に口を開く。
「なんか、串に刺さっていてバーベキュースタイルで良かったです」
弾んでいる声に、今日の夕食は正解だったと安堵する。確かに、堅苦しくないカジュアルな雰囲気のレストランで食事はしやすかった。
「そうか。それなら良かった」
マンションエントランスロビーに向かうエレベーターに向かいながら、小さな手を掴み取る。自分でも自然にそうしていた。
今日のスタートでは戸惑って握り返してくれなかった彼女の手が、わずかに指に力が入り触れてくる。それだけのことなのになんだか嬉しい。
エントランスロビ―に上がり、そのまま居住階用のエレベーターに乗り込んだ。
「今日はありがとうございました。これでもう少し部屋が片付きます」
「明日の夜の配達になったから、受け取りは頼む」
「わかりました。遥さんは、明日からニューヨークって言ってましたもんね」
「ああ。数日家を空ける」
明日から国際線のフライトでアメリカへ飛ぶ。
ニューヨーク泊を挟んで日本に帰国するのは三日後になる。