王子は愛しき姫の目覚めを待つ
「藤川さん、まだ酔ってます?」
そうそう、私は藤川あかりと申しまして……って、イケメンに当たり前のように名前を呼ばれましたが?
しかもその声には聞き覚えがあるような気もしてきましたが?
今度は恐る恐る後ろを振り返る。
顔がいいその男性のことを、私はよく知っていた。
彼の定番ファッションアイテムであるメガネが顔面から差し引かれていて、さらに顔の良さが増しているものだから一瞬誰だかわからなかったけれど——
「……坂嶺くん?」
「はい」
まるでオフィスで名前を呼んだみたいにナチュラルな返事を返されて、添い寝している男性を会社の後輩である坂嶺くんだと認識してはみたものの、私には状況がさっぱりわからない。
「何も覚えてないですか?」
「……うん。あ、いや……かなりお酒を飲んでたことは……思い出してきた」
「きのうの飲み会で、藤川さん酔い潰れちゃったんですよ」
「……そうかも」
じわじわ思い出すのは職場の飲み会で、仲の良かった同期の神田くんがやけに後輩の女の子にべったりだったことと、隠れるようにその子と連絡先を交換していた姿を見てしまったことだ。
私は神田くんのことが好きだったけれど、彼は彼でそんな私に対して思わせぶりな態度が上手かっただけなのだと気づき、いろんな感情が一気に押し寄せてきた。
でもやっぱり一番にあった悲しい気持ちを紛らわせるためにお酒の力を借りてしまい、その先の記憶がまったくない。
そうそう、私は藤川あかりと申しまして……って、イケメンに当たり前のように名前を呼ばれましたが?
しかもその声には聞き覚えがあるような気もしてきましたが?
今度は恐る恐る後ろを振り返る。
顔がいいその男性のことを、私はよく知っていた。
彼の定番ファッションアイテムであるメガネが顔面から差し引かれていて、さらに顔の良さが増しているものだから一瞬誰だかわからなかったけれど——
「……坂嶺くん?」
「はい」
まるでオフィスで名前を呼んだみたいにナチュラルな返事を返されて、添い寝している男性を会社の後輩である坂嶺くんだと認識してはみたものの、私には状況がさっぱりわからない。
「何も覚えてないですか?」
「……うん。あ、いや……かなりお酒を飲んでたことは……思い出してきた」
「きのうの飲み会で、藤川さん酔い潰れちゃったんですよ」
「……そうかも」
じわじわ思い出すのは職場の飲み会で、仲の良かった同期の神田くんがやけに後輩の女の子にべったりだったことと、隠れるようにその子と連絡先を交換していた姿を見てしまったことだ。
私は神田くんのことが好きだったけれど、彼は彼でそんな私に対して思わせぶりな態度が上手かっただけなのだと気づき、いろんな感情が一気に押し寄せてきた。
でもやっぱり一番にあった悲しい気持ちを紛らわせるためにお酒の力を借りてしまい、その先の記憶がまったくない。