王子は愛しき姫の目覚めを待つ
「家まで送ろうかと思ったんですけど、タクシー乗り込んだら藤川さんすぐ寝ちゃって」
「……それは、もうなんて謝れば……」
「いや、神田さんが藤川さんのこと送るって言ってたのに、俺、藤川さんの家知ってるからって嘘ついて奪ったんで。俺のほうこそすみません」
「か、神田くんが……?」
「神田さんと藤川さんは仲がいいのかと思ってたんですけど、あのひとは藤川さんの家も知らないし他の子も口説いてたみたいだし」

 坂嶺くんが奪ってくれなかったらと思うとゾッとした。まったく男を見る目がない。
 そんな寒気と同時に肌に直接、上質な毛布が触れていることに気がつく。
 あわてて自分の姿を確認すると、下着しか身につけていないことに気がついて思わず叫びそうになるほどびっくりした。
 今さらだが毛布をぐいぐい引き寄せて体を覆い、あんぐり口を開けたまま坂嶺くんを見ると、彼は両手をあげてみせる。

「ここ俺の家ですけど、脱いだのは藤川さんで手は出してません」
「酔って男の人の家で自分から脱ぐとか……」

 私はとんでもなく情けなくなって思わず顔を両手で覆う。

「藤川さん、脱ぐと下着姿かなりエロいですね」

 恥ずかしい気持ちをさらに煽るように、坂嶺くんが艶っぽい声で囁いた。
 そして顔を覆ってた両手が彼の大きな両手にそっと外され顔を寄せられる。
 キスしてしまいそうなほど近いのに、坂嶺くんの整った顔立ちと肌がきれいで、危機感を抱くのも忘れて思わず見惚れてしまった。
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