王子は愛しき姫の目覚めを待つ
「そんな風に何人もの女の子を口説いてきたようなベッドの広さに見えてきた……寝室でこの広さとか、そもそもうちの会社のお給料でここには住めないような……」
「いまだ過保護な親に金がある上に、末っ子の俺のことは特に放っておけないみたいで。世話焼かれた結果が、この家の広さと大きすぎるベッドの正体です。ちなみに俺は藤川さんのことは好きですけど、好きでもない女の子と遊ぶことに興味はありません」
 
 何かボロが出るのではないかとつついてはみたものの、坂嶺くんは私が指摘することなど、あらかじめわかっていたかのように笑顔でサクサク解答する。
 解答内容を頭の中で復唱してみても、彼にときめく以外、今の私にとって正解はないように思う。

「他に何か気になることはありますか?」
「……なんで、私のこと?」
「俺には、藤川さんが誰よりもかわいく見えるから」

 坂嶺くんは微笑みながらそう言って私の頬を優しく撫でた。
 結論。今の私は彼に落ちないなんて無理だと思う。
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