追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜
第3話 迷えるネビュラの森
教会を追い出されたミアは、中身などほとんど入っていない旅行鞄を持ってとぼとぼと歩いていた。
ミアは立ち止まって後ろを振り返る。何百年も前に建てられた教会は慎ましい姿をしていて、夕闇の中でも威厳を保っていた。
(再就職もできない。領内からも出られない。これからどうしよう)
完全に人生が詰んでいる。
(選択肢は二つ残っているけど。絶対にいや)
はあっと深いため息を吐くミアは再び歩みを進める。
丘を下りながら眼下に広がる町を眺める。道路には家路につく人たちの群れが行き交っていて、家々の窓からはぽつりぽつりと灯りがともり始めていた。
(これからどうしよう。やっぱり野宿かな)
一泊するくらいの持ち合わせはあるが、お金は大事な時のために取っておきたい。
とはいえ、サバイバルスキルなど持ち合わせてはいないのでどう野宿すればいいかも分からない。
途方に暮れていたら、少し湿った何かに頬をつつかれる。
『メェ~』
「ア、アリエス」
意識を引き戻せば、目の前にはアリエスの姿があった。
アリエスはこんな時間にどこへ行くの?というようにミアと教会を交互に見る。
ミアは両手でアリエスを挟み込むと、眉尻を下げて事情を話した。