追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜

「君は大地の……」
 ミアはそこでハッとして小さく咳払いをした。
「おはようございます。気分はいかがですか?」
 この際自分が家宅侵入しているとか、勝手に台所を使ってお茶を飲ませたとかは一旦脇に置いておく。

 ミアが声を掛けると、青年が頭を動かしてこちらを見る。彼の瞳は太陽に照らされた海のように輝いていて、じっと見つめていたら吸い込まれそうだった。

「あなたが目覚めさせてくれたのか? 私はユースだ」
「ミア・クレイです。そうですね。ユースさんは私のお茶で目覚めたようです」
 質問されたので素直に答える。
 ユースは穏やかに微笑んで、ミアの両手をぎゅっと握り締めた。

「ありがとう。ミアは命の恩人だ」
「え、私が?」
 ミアは家宅侵入して勝手にユースの口に薬草茶を流し込んだ。端から見ればただのやばい人であり、命の恩人ではない。
 きっとユースは勘違いしているのだろうが、どう答えるのが正解か分からない。
「私は……」
『メェ~』
 するとアリエスがミアは頑張り屋さんで凄い子なんだ、とユースに語り出す。
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