追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜
「へえ、そうなのか」
ユースはアリエスの話に相づちを打っていた。
(ちょっとアリエス。なんで会ったばかりの人の前で私を褒めそやすの?)
それ以上褒められるのは却って恥ずかしすぎる。穴があったら入りたい。
だがそこで、ミアは大事なことを思い出した。
「待って。アリエスは他の人には見えないはずなのに。ユースさんは見えるの!?」
これまで誰もアリエスの姿は見えなかった。だから決して人前ではアリエスと話さないようにしていたのに。
「どうして?」
ミアが純粋な疑問を口にしたら、ユースがくすりと笑った。
「長い話になるからお茶でも飲みながら話さないか? さっき飲ませてくれたお茶、心が温まってとても美味しかった」
「!」
ミアは胸を突かれた。
これまでヘルガにお茶を淹れてきたが一度だって美味しいと言われなかった。
ユースの一言はヘルガに淹れてきた分まで報われた気持ちになる。美味しいという言葉はミアの心の奥へと染みこんでいった。じんわりと広がっていく温もりを感じ、ミアは胸の上に手を置く。
「ええ、もちろんです」
ミアは、うんと美味しいお茶を振る舞おうと張り切った。