追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜
第4話 大地の精霊師
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「うふ。うふふ。うふふふふふ」
自室に戻ったヘルガはご機嫌だった。
総主教との懇談は礼拝堂でのハプニングはあったものの、恙なく終了した。
彼は始終リラックスして過ごされていたし、ヘルガの聖女に対する考えについても感心しているようだった。お世話役に回っている修道士によれば、総主教は候補者の中で一番ヘルガが聖女に近いと言っていたとか。
聖女候補は聖女になるための試験を受けなくてはいけない。これまでいろんな試験を受けてきたが、残るは三ヶ月後の魔物討伐のみ。どれほど治癒が備わっているか実践で測られる。
(次の試験は私の得意分野。負ける気がしないわ)
ヘルガは他の候補者よりも自分の治癒が優れていると自負している。その証拠に、毎日のように領内外から回復薬の依頼が殺到している。
一応、領主である父の権力を使って他の候補者の活躍を調査してみたが、どちらも治癒はパッとしなかった。
「聖女なるのはこの私でき・ま・り」
これまで、特に魔力が向上してからの半年間は、多くの人々に善良な聖女候補と思われるよう彼らに寄り添い、信頼を築いてきた。その努力が良いタイミングで花開こうとしている。
ヘルガは鼻歌交じりにドレッサーの前に座り、頭に付けていたウィンプルを外ずす。
「今日は人生の中で最高の気分だわ!」
高揚感に浸っていたら、中年の修道女がお茶を持ってやって来た。普段訪ねてこない彼女を見てヘルガは訝しむ。
「何かしら?」
「今夜は私がお茶をお持ちしました」
合点がいったヘルガはドレッサーのテーブルの上に手を置く。
「ここに置いてちょうだい。下がっていいわ」
修道女は言われたとおりにお茶を置いて出ていった。