追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜
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ミアは沸かし直したお湯をポットに注いでいた。
次はどんな薬草茶にしよう。作業台の向こう側に座っているユールをちらりと盗み見る。
彼は全身についた埃を手で払っていた。
(ユースさんをよく知らないけど、目覚めたばかりだから刺激の強いものより、胃に優しい薬草を選んだ方がよさそう。リラックス効果が高ければなお良し)
自ずとどんな薬草を掛け合わせるか決めたミアは、紙袋を確認する。
お目当ての薬草はきちんと入っていたので、にこにこ顔で作業を始めた。
今回使用するのは爽やかなレモンの香りとほのかな甘みが特徴のレモンバーベナ。口当たりもまろやかでさっぱりとしていて飲みやすいのも特徴だ。
ミアはポットにレモンバーベナの葉を数枚淹れてお湯を注いだ。
数分蒸らした後、カップに注ぐとふわふわと立ち上る湯気とともに柑橘系の爽やかな香りが鼻を抜ける。
「どうぞ、召し上がれ」
ミアは淹れ立ての薬草茶をユースの前に出す。
ユースは火傷に気をつけつつ、それを啜った。
たちまち彼の青い瞳がきらりと輝き、ほんのりと頬が上気する。その表情はすべてを物語っていて、ミアは肩の力を抜いた。
「口の中がさっぱりしてすごく美味しい。ミアはお茶を淹れるのが上手だな」
「ありがとうございます。一応特技なので……」
毎日朝昼晩とヘルガのためにいろんな薬草茶を淹れていたのだから、分量と時間配分は大凡の予想が立てられる。
「お茶を淹れる才能もそうだが、相手の身体にきちんと配慮ができている。流石は大地の精霊と契約している精霊師だ」
「大地の精霊と契約? 精霊師?」
ミアは頭の上に疑問符を浮かべる。