追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜
「眠っている間、いろいろ迷惑を掛けたな」
『バウ』
「私は二年も眠っていたのか? 目覚めるのが間に合って良かった」
『バウバウ!』
まだ怒っているルプはユースに対して小言を言っていた。
内容を要約すると『魔力過眠症なんぞに負けおって。この馬鹿者!』や『俺がアリエスに頼まなければおまえは死んでいたぞ馬鹿者が!』などだ。
最後に必ず『馬鹿者』と付けているが、よほど心配していたのだろう。瞳は潤みを帯びている。
「心配させて悪かったよ」
ユースは席を立ち、ルプと対峙すると彼の額に自身の額を付ける。ルプもようやく落ち着いて最後に『クゥン』と鳴いた。
ユースは彼の顎を撫でながら、頃合いを見計らってミアに紹介する。
「ルプは私が契約している風の精霊だ。とても強く勇敢で、私は彼から国を守るための特性を与えられた」
ふとそこでミアはとある話を思い出す。
(サフィン王国はここ十数年、他国から一度も侵攻を受けていない――というのを行商人たちが話していた気がする)
どうやらその力はルプによるもののようだ。
「ところでミア、私とサフィン王国に来ないか?」
「え?」