追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜
ミアは突然の提案に目を白黒させる。
ユースはその理由を教えてくれた。
「私は魔力過眠症を再発する可能性がある。だからミアが側にいてくれたらとても心強い」
確かに一理ある。それにミアがロマ領へ戻っても生きる希望はどこにもない。
精霊師という職業はロマ領では認知されていないし、ヘルガの妨害で商売だって始められない。それなら、ユースと共にサフィン王国へ行った方が生活していける気がする。
思案するミアにユースはたたみ掛ける。
「私のためにお茶を淹れてくれ。ミアの淹れるお茶に特性があろうとなかろうと、私はずっと飲んでいたいんだ」
ユースから両手をぎゅっと握り締められて懇願される。これほど真摯な眼差しを向けられて心が動かない訳がない。
そして、ユースの喜ぶ顔が見たいとミアは心の底から思ってしまった。
「一緒に行きたいです。サフィン王国へ」
返事を聞いたユースが満足げに目を細める。
「決まりだな。なら改めて自己紹介をしておこう。私はユース・サフィード。サフィン王国の王子だ」
「……え?」
普段聞き慣れない言葉にミアの思考が停止する。ユースは続けた。
「ミアにはこれから私付きの精霊師として働いてもらう」
予想していなかった内容に、ミアは素っ頓狂な声を上げたのだった。