追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜

第5話 癒しの力


 サフィン王国へ渡って一ヶ月。ミアはここでの暮らしに慣れる努力をした。
 文化や風習、価値観についてはユースや本から学んだ。幸い、文字と言語はルビリア王国と同じなのでありがたかった。

 異国なので失敗することもしばしばあるけれど。ミアが転んでも、必ず起き上がれたのはユースが手を差し伸べてくれたお陰だ。
 これはただの憶測だが、強引に自分付の精霊師にしたことに負い目を感じているだろう。たまに潤みを帯びた熱い視線を向けられるので、ミアは反応に困ってしまう。ユースはどん底から救ってくれた恩人なので、そんな風に思って欲しくない。
 一度感謝と共に罪悪感を抱かないでと伝えたら、何故か苦笑されてしまった。

(一ヶ月……長いようで短かった)
 ミアは初めて王宮を訪れた日のことを思い出す。
 ユースの姿を見た国王と王妃は大喜びだった。ここだけの話だが、ユースが魔力過眠症で倒れたというのは極秘事項で、表向きは重い病気になったので地方で療養中としていたらしい。
 王族は精霊師として開花するが、その魔力量が異常なほど豊富なせいで何人かが必ず魔力過眠症になって死んでしまうのだとか。
< 31 / 49 >

この作品をシェア

pagetop