追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜
第5話 癒しの力
サフィン王国へ渡って一ヶ月。ミアはここでの暮らしに慣れようと努力していた。
文化や風習、価値観についてはユースや本から学んだ。文字と言語はルビリア王国と同じなのでありがたい。
もちろん異国なので失敗することもしばしばあるけれど。ミアが転んでも、必ず起き上がれたのはユースが手を差し伸べてくれたからだ。
これは憶測だが、強引に自分付の精霊師にしたことへの負い目があるからかもしれない。たまに潤みを帯びた熱い視線を向けられるのでミアは反応に困ってしまう。
ユースは袋小路の人生から救い出してくれた恩人なので、そんな風に思って欲しくない。一度感謝と共に罪悪感を抱かないでと伝えたら、何故か苦笑されてしまった。
ユースはこの国の王子だ。王族にはミアが想像できないたくさんの重責があるはず。だから自分のことでミアは負担になりたくない。
ミアは初めて宮殿へ行った日のことを思い出す。
ユースの姿を見た国王と王妃は大喜びだった。ここだけの話だが、ユースが魔力過眠症で倒れたというのは極秘事項で、表向きは重い病気になったので地方で療養中としていたらしい。
王族は精霊師として開花する者が多いが、その魔力量が異常なほど豊富なせいで何人かが必ず魔力過眠症になって死んでしまうのだとか。