追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜

 魔力過眠症を治せるのは大地の精霊と契約した精霊師のみ。しかし、精霊師の中でも幻の存在でここ三十年は不在だったようだ。
 この秘密が国内外に漏れれば王家の威信が揺らぎかねないので、魔力過眠症になった王族はネビュラの森のログハウスで隔離される。因みにあのログハウスは皇家が二十年ほど前に建てたもの。
 皇帝の側近と医務官が定期的にやってきてはユースが目覚めるよう治療していたが、どれも効果はなかった。

 ユースを救ったミアは、国王と王妃から感謝された。国王は褒美としてミアにサフィン王国の国籍を与えてくれた。さらには精霊師として研鑽を積めるよう、宮廷精霊師の集う研究所にも入れてくれた。

 ユースが精霊師として目覚めて以降は誕生していなかったため、ミアは宮廷精霊師たちに温かく迎えられた。精霊師の数は王族を含めても国内で二十人ほどしかおらず、宮廷で働く精霊師は全部で五人だ。
 ミアは、彼らから精霊師のいろはを教えてもらった。

 精霊師は魔法が使えない代わりに精霊から与えられた特性を使うが、その精度を上げるには精霊と心を通わせる必要があるらしい。
 ミアの場合はアリエスが大地の精霊なので大地との触れあい――薬草園で薬草を育て慈しむのが一番だと教えられた。
 教会で修道女として働いている時も薬草を育てていたので薬草を管理するのは難しくなかった。それどころか仕事量は教会にいた頃よりも少ないので拍子抜けするくらいだ。

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