追放シスターは王子の一途な恋に気づかない〜癒しの精霊師になったので今日もせっせと薬草茶を淹れます〜

 この秘密が国内外に漏れれば王家の威信が揺らぎかねないので、魔力過眠症になった王族はネビュラの森のログハウスで隔離されるらしい。因みにあのログハウスは皇家が百年ほど前に建てたもので、皇帝の側近と医務官が定期的にやってきてはユースが目覚めるよう治療を施していたみたいだ。けれど、どれも効果はなかった。

 手の施しようがなかったユースを救ったミアは、国王と王妃から感謝された。
 国王は褒美としてミアにサフィン王国の国籍を与えてくれた。さらには精霊師として研鑽を積めるよう、宮廷精霊師の集う研究室にも入れてくれた。

 精霊師の存在は大変貴重で、ユースが精霊師として目覚めて以降は誕生していなかったので、ミアは宮廷精霊師たちに温かく迎えられた。
 そして、彼らから精霊師のいろはを教えてもらった。

 精霊師は魔法が使えない代わりに精霊から与えられた特性を使うのだが、その精度を上げるには精霊と心を通わせる必要があるらしい。
 ミアの場合はアリエスが大地の精霊なので大地との触れあい――薬草園で薬草を育て慈しむのが一番だと教えられた。

 教会で修道女として働いている時も薬草を育てていたので薬草を管理するのは難しくなかった。それどころか仕事量は教会にいた頃よりも少ないので拍子抜けするくらいだ。
 薬草園の手入れを終えたミアは、近くで浮遊していたアリエスに話し掛ける。
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